アスタキサンチン効用

アスタキサンチンとは

アスタキサンチン。
耳慣れない言葉ですよね。
基本的には、一般の方が目にする機会は決して多くない言葉かもしれません。
しかし、同時に今後目にしたり耳にしたりする機会が多くなる可能性を秘めているものでもあります。
今から知っておけば、いつか得をすることになるかもしれません。
その時の為に、是非ここで覚えていってください。

アスタキサンチンとは、色素物質のひとつです。
1938年にリヒャルト・クーンをはじめとするオーストリア、ドイツの科学者の人達によって発見されました。
このリヒャルト・クーンは同年にノーベル化学賞を受賞しています。
初めてビタミンBの分離を行った人でもあります。
そんなすごい人が見つけた色素物質が、アスタキサンチンなのです。

アスタキサンチン、そして色素物質のひとつと言われてもなかなかピンとこない人が多いかもしれませんが、カロテノイドの一種というと、結構「ああ、そうなのか」と思う方がおられるかもしれませんね。
カロテノイドは緑黄色野菜に含まれている赤や橙、黄色などの色素なので、聞いたことがあるという人も多いでしょう。
アスタキサンチンはこの一種で、β-カロテンの仲間のようなものです。

では、このアスタキサンチンというのは、一体何に含まれている色素なのでしょう。
実は、甲殻類の殻、そしてそれらを餌としているマダイの体表やサケ科魚類の筋肉といった部分です。
つまり、カニやエビの赤、タイや鮭の赤の色素こそが、アスタキサンチンと呼ばれるものなのです。
自然界を生きる動植物の色というのは、色素があるからこそ視覚的な確認ができるのです。

アスタキサンチンの自然的価値

アスタキサンチンは、単なる色素というわけではありません。
抗酸化作用の高い色素物質です。
それが何を意味するのかというと、そのアスタキサンチンを含んでいる生物は、その抗酸化作用の恩恵を受けるということになります。

例えば、鮭。
鮭は川や海で微生物等のエサを食べますが、そのエサにアスタキサンチンが含まれているため、非常に豊富なアスタキサンチンを体内に摂取しています。
そのため身が赤くなって、さらに卵であるイクラの身をも赤くしています。
この赤みに関しては、取り立てて彼らにメリットがあるわけではありません。
メリットがあるのは、抗酸化作用です。

鮭は川で生まれますが、育つのは海です。
川を下っていき、海で暮らし、その海から再び川へと上っていき、その川で産卵を行うという、珍しい魚です。
鮭は、海から川へ戻る際、当然ですが流れに逆らうことになります。
流れに逆らって泳ぐというのは、人間であっても相当筋力を消費します。
いくら鮭といえど、そう簡単にできることではありません。
しかも、川は浅瀬になっているところも多く、そこに出てしまうと魚の天敵ともいえる太陽光線が待っています。
そこで力尽きる鮭も多いのです。

そんな中、その太陽光線から身を守ってくれるのが、アスタキサンチンだったりします。
抗酸化作用の賜物です。
同時に、アスタキサンチンにはエネルギーとなる要素も含まれているので、急流や逆流にもまれても力尽きずに川までたどり着けるのも、アスタキサンチンのおかげかもしれません。

このように、アスタキサンチンは自然界において大きな役割を担っています。

アスタキサンチンを持つ動植物1

アスタキサンチンを持つ動植物は、自然界にたくさんあります。
一番顕著なのはカニでしょうか。
カニというと、多くの人が真っ赤な色を想像しますよね。
この色がアスタキサンチンによってもたらされた赤です。
しかし、カニというのは生きているときは黒みがかった青灰色をしています。
これは、アスタキサンチンがたんぱく質と結合し、カロテノプロテインという物質に変質しているからです。
茹でたり焼いたりして加熱した場合、分離して赤くなるのです。
つまり、アスタキサンチンは生きている状態で赤くない生物であっても、その身に含んでいる可能性があるということです。

具体的にいうと、タコや鯉もこの一種です。
タコも赤いイメージがあるかと思いますが、これは茹でてはじめてそうなるのであって、生きているタコは黒っぽい青灰色です。
生のタコを見たことある人には、納得していただけるかと思います。
同様に、鯉もそうです。
ただ、鯉には錦鯉のような真っ赤な鯉もいます。
これは、観賞用として人工的に模様をつけたもので、本来の天然の鯉は黒っぽい色をしています。
加熱すれば赤くなるでしょうが、あまり鯉を過熱する人もいないでしょう。

鯉と同じく、金魚もアスタキサンチンを持った生き物です。
金魚も基本的には観賞用として色づけされており、ヒブナという魚がその元となっています。
ヒブナは赤みを帯びており、タイの色に似ています。
たんぱく質との結合がそれほど強くない場合、赤色を帯びます。
この魚たちは、そういうことなのでしょう。

アスタキサンチンを持つ動植物2

アスタキサンチンを持つ動植物としては、イクラも無視できません。
イクラのあの宝石のような赤色は、アスタキサンチンの賜物です。

鮭の身自体、アスタキサンチンによってまっ赤っ赤ですよね。
その鮭の卵であるイクラにアスタキサンチンが含まれているのは、ごく自然のことと言えます。
あれだけ赤いということは、それだけ多くのアスタキサンチンが含まれているということなのでしょう。

イクラに関連して、キャビアにも実はアスタキサンチンが含まれています。
よって、世の中には赤いキャビアというものも存在しています。
三大珍味のひとつとして数えられるキャビアの中でも、かなり珍しい部類に入るのではないでしょうか。
ただ、ほとんどの日本人がイクラと勘違いしているようです。

このほかにも、クロレラにもアスタキサンチンは含まれています。
クロレラというと、クロレラジュースなどでおなじみのものですが、このクロレラって実は何なのかよく知らない方も多いようです。
中には、ジュースになっていることから、果物と思っている方もいるかもしれません。
クロレラは淡水性の単細胞緑藻類、つまりは植物性のプランクトンなのです。
つまり、アスタキサンチンは微生物にも含まれていることになります。
自然界の幅広いところで見受けられる色素物質と言えますね。
このクロレラのほかにも、ユーグレナや赤色酵母などといった微生物たちに、アスタキサンチンはそれぞれ含まれているようです。

アスタキサンチンを持つ動植物3

アスタキサンチンを含んでいるもののほとんどは、自然界の動物たちです。
しかし、中には植物もあります。
アスタキサンチンを含んでいる植物はフクジュ草くらいではないでしょうか。

実はこのアスタキサンチン、そのほとんどが動物に含まれているにもかかわらず、動物が自分自身でその色素を生み出すということはできません。
アスタキサンチンを生み出すことができるのは、微生物と植物だけです。
では、なぜ動物がこのアスタキサンチンをその身に含んでいるのかというと、食物連鎖による体内への取り込みからの備蓄です。

要は食料の中にアスタキサンチンが含まれており、それを重ねていったことにより、いつの間にかその動物の体内にアスタキサンチンが蓄積され、その子供、そして子孫にもアスタキサンチンを有するということになったようです。
エビなどの海洋動物は、プランクトンをエサにしているので、すごくわかりやすい理論ではあります。
また、シャケの卵であるイクラにアスタキサンチンが含まれていることからも、それが実証されていると言えるでしょう。

そんなわけで、自らアスタキサンチンを生み出すのは、微生物のほかには、フクジュ草などの植物のみです。
また、海藻類、そしてサンゴもその中のひとつに含まれます。
サンゴの赤もアスタキサンチンなのですね。
サンゴは海の宝石と言われる、日本でも特に好まれている色のものなので、アスタキサンチンはある意味宝石に匹敵する価値があると言えます。

実際、サンゴをアクセサリーとして着用している人は多いわけですが、それはつまりアスタキサンチンを見せびらかしているということになります。
実はその色がカニやエビと同じ色素だとは、夢にも思いませんよね。

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